隻狼と天誅

  隻狼が大変面白く、現在は3週目に差し替っている。詳しいゲーム内容は割愛するが、かなり大雑把な説明をするとソウルシリーズにステルス要素を追加した忍者アクションゲームである。

  基本的なシステムはダークソウルと同じなのだが、鉤縄で高所に移動するアクションや忍殺(ステルスキル)で一撃必殺など、在りし日の天誅シリーズを彷彿とする場面が何度もあった。元々はアクワイアが制作していたシリーズなのだが、版権で一悶着あり、途中からフロムソフトウェアの作品となった。それだけあってプレイ感はどこか類似しており、宮崎Dも隻狼は天誅の精神的続編であることを明らかにしている。

  天誅からゲームを始めたオタクとして、当時のフロムソフトウェアにはいい思い出がなかった。箱庭型のマップから一本道に変更された事により、アクワイア製に比べて攻略の自由度は著しく減少した(アクワイア製の天誅4は除く)。また、フロムはキングスフィールドの頃から海外への展望を据えた企業である事から、忍者というよりは(雷を落とす等の派手な忍術を扱う)JAPANESE NINJAのイメージを意図的に形成していった。よって、私はフロムソフトウェアに良い印象を持っていなかった。

  だが、隻狼の「異質な日本感」のバランス感覚は、それらの負のイメージが払拭される程に素晴らしかった。天誅参の「いびつで海外被れした日本」ではなく「紛れもなく日本だが、何処か異質で、それ故に美しい日本」を上手に構築していた。本来、アクワイア天誅も「地味な時代劇かと思えば、唐突に妖怪が出てくるファンタジー日本」だった。当時のフロムはこのファンタジーに焦点を当てすぎた様に思えるが、隻狼のバランス感覚は本当に素晴らしかった。版権は未だにフロムソフトウェアにある以上、このセンスで天誅の続編を作って欲しいというのが、いち天誅ファンの傲慢な要望である(天誅4は忘れていい)。

思考の出力 RDR2

日記

  緩慢的に過ぎていく時間が怖い。何もしないでいたいのに、環境だけが進んでいくせいで段々と自分の首が絞まっていくのを感じる。

 

余談

  ゲームは何の労力もなく出来るので、受動的な姿勢で挑む事ができる。最近で言えばレッドデッドリデンプション2が特に面白かった。西部劇版GTAと称されているシリーズだけあって、銃撃戦や強盗などのクライムアクションの質が高く、他にも食事や睡眠などの生活シミュレーターの側面も含まれており、一人のアウトローになりきる事が出来た。移動、ジャンプ、発砲、飲酒など、何をするにしても全てがスローペースな作品で、その感覚に適合するまでは苛立ちを覚えてしまうかもしれない。しかし、それぞれの固有モーションが極めて緻密であるため、慣れてしまえば西部時代のアメリカに没入する事が出来る。

  一際素晴らしいと感じたのは、病的なまでにこだわった環境づくりだった。森や農場、それら自然の細部には動植物の生命が宿る。サンドニの街では人間達の息遣いが高湿度の空気によって伝播し、生活が確かに存在している事を思い知らされる。ゲームの嘘を極端に省き、快適さを棄ててリアルを追求したゲームデザインだからこそ、より一層、これらの世界に没入する事が出来た。 

  決してGTAシリーズの様に万人受けするソフトではないが、ゲームオタクは絶対にプレイし、西部時代の終焉を生きる男達の物語を追体験して欲しい。

 

インターネットの受け売り

『パネルラ』の真相に迫る!2408文字インタビュー

パネルラ feat.蒼姫ラピス(作曲:むかし僕が死んだ家P 作詞:HeadNho)

 

――まずは『パネルラ』が誕生した経緯を教えて下さい。

 endrollhouseっていう音楽グループを結成してるんですけど、そのグループ……というか僕の方針として「いろんな音楽ジャンルがごった返してるアルバムを作る」っていうのがあって。その為にはコラボ曲は必要不可欠だと思ったんです。で、僕は作詞をするのが滅茶苦茶好きなんですよね。なのでアルバムどうこうの打算的な理由よりも、純粋に作詞がしたかったって理由でむかし僕が死んだ家Pさんの作詞を強く熱望しました。

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                     強く熱望するHeadNho

――むかし僕が死んだ家Pさんの曲を作詞しようと思った理由は?

 普段、僕はネガティブっぽい曲調の歌詞しか書いたことがなかったんですよ。その殻をどうしても破りたくて。むかし僕が死んだ家Pさんの曲は何処までもポップで、そんな曲調の作詞をしたらどうなるんだ?っていう化学反応を見たかったんです。とにかく、むかし僕が死んだ家Pさんのメロディに詩を乗せたかった。

――挑戦的な意味合いが強かった、と。

 そうですね(笑)
でも結局、パネルラの歌詞はネガティブな要素が強くなったかもしれないです。

――作詞するにあたって難航したことは?

 音を邪魔しない言葉選びです。でも当たり障りのない言葉を安易に当てはめてしまうと、人の心に何も残らない。若干の“違和感”を入れて、そのバランスを取ることにすごい苦戦しました。あと……やっぱりストーリーの構築ですかね。

――『パネルラ』には宮沢賢治銀河鉄道の夜』の要素が多くある様に思えました。その理由を聞かせて下さい。

 むかし僕が死んだ家Pさんに頂いた音源を聴いて、「あ、これは冒険モノにしたいな」って思ったんです。キラキラしてる感じの歌詞を書こう、と。それで飛びついたのが『銀河鉄道の夜』でした。これを再構築して新たに物語を作れば、良い感じになるんじゃないか、みたいな。あとラスサビに入る前の高音が汽笛に聞こえたんですよ。これは題材を決めたあとに感じたことですが(笑)

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                      (笑)のHeadNho

――ストーリーの内容を教えていただけますか?

 地球は凄惨な環境下にあった。それは太陽の光が弱まったことが原因だったんです。太陽の光が弱まれば、地球は次第に凍土に覆われる様になり、食べ物の確保や、様々な行為がままならなくなる。そんな環境下に生まれ育った少年が、『パネルラ』の主人公です。少年は他の子供たちと何ら変わりのない、貧しい生活を送っていました。
 ある日、少年は銀河鉄道に出会います。銀河鉄道には「パネルラ」と名乗るひとりの少女が乗っていて、少年に「地球を救いませんか?」といった提案をします。少年は意を決してこれを承諾する。そして物語が始まって、曲に繋がるわけですね。
 地球の悪しき環境を打破する方法は、“星”を探すことでした。太陽の光を補助するような星を手に入れる。これが唯一の方法でした。少年とパネルラは“星”を目指して銀河を旅するわけですが、この話には裏があったんです。これはラスサビで分かることなんですが、“星”とは少年自身だったんですね。パネルラは最初から少年を騙していました。それを悟った少年は、家族や友達のために星になります。これが物語の全貌です。

――おそらくなんですが、詩の中の主観がコロコロ変わってますよね。

 さすがですね(笑)A,Bメロが少年視点、サビが基本的にパネルラ視点で、最後だけ少年視点になってます。

――あと、伏線が張られているようにも思いました。

 凄い(苦笑)はい、ただ伏線とまでは言えないかもしれないです。“「あれが彗星」と 君の震える指が そっと指し示す”のくだりは、少年を欺いていることに対するパネルラの葛藤を表現しています。実はこの彗星も元々は人間で、彗星の発する人間性を感じて欲しかった、彗星が人間であることに気付いてくれれば、少年は“星”とは何かを察し、どうにか人間のままでいてくれるかもしれない、といった願望で、パネルラは彗星を指し示しています。これがオチの伏線?ですね。

――パネルラは少年に恋心を抱いていた?

 そう解釈してもらっても全然大丈夫です!

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                      全然大丈夫なHeadNho

――それならば、なぜパネルラは少年が星になることを止めなかったのですか?地球を救うことを提案した理由はなんだったのでしょうか。

 曲中でも述べている様に、パネルラは宇宙の子供である元素の内の“炭素”です。それぞれの元素たちは宇宙の法則を維持する役割を担っていました。ある日、太陽は力を失い、それぞれの惑星に生息する、とてつもない数の生物達も命を次々に落とし、結果的に宇宙全体のバランスも乱れてしまいました。このまま放っておけば、宇宙の破滅に繋がる。宇宙全体に適用させた質量保存の法則みたいな感じで、その法則が破られると矛盾が生じ、宇宙が消滅しちゃう訳です。で、これをどうにかしなけばならない。そこで、炭素であるパネルラは、先人たちが行ってきた最も合理的な方法である「生物を星にする」計画を実施しようとしました。様々な生物を調査し、ようやく適任である生物として判断されたのが主人公です。ちなみに「地球を救う」というのは、少年の立場に立って発言したもので、実際は「太陽を再生する」ことを重視していました。

――設定上、パネルラを“炭素”とした理由は?

 完全に言葉遊びです。「私はパネルラ。そして私は“炭素”」の部分なんですけど、これを英語にすると「I am Panella. And I am carbon.」ですよね。そして炭素は元素記号で「C」。つまり「I am C」で「I = C」になります。そして、この「C」を冒頭の「I」に代入して、「C am Panella」→「Campanella」→「カムパネルラ」となる訳です。

――なるほど。本日はありがとうございました。

 はい。

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                         はい